春を待ちながら
加賀の千代姫改め今千代御前が、新たなご出発に向けての「よろずご相談」に、十年ぶりに訪ねてくださったのは、一昨年の五月のことでした。
一九九七年に入門され、月一度金沢から通われた三年間。仕事での葛藤、人間関係の悩み、愛する人との出会い、お父君の突然のご逝去、ご結婚、と起伏のある道のりを歩まれるお姿を見守りながら、丹生谷もまた傍を歩ませていただいておりました。
やがてご出産、そしてご主人様の故郷福島への移転、生死の境をさまよったという二度目のご出産を経て、お仕事を続けられながら、光陰は過ぎ。
「先生と出会ったから今の自分がある」「これからも女性を幸せにすることを仕事にしていきたい」と瞳を輝かせて語ってくださったあの日から十ヶ月後、まさかあんなことが起ころうとは。
年が明け、弥生三月、花だよりが待たれる春。突然、東日本を襲った地震と津波とそして原発事故と。南相馬のご自宅で被災され、二人のご子息を守らねばという一心で、医者として被災地を去れないご主人を残し、敦賀のご実家まで命からがら逃れていらしたお話を、立冬を迎えた十一月、京都はわらじやの常と変わらぬ平和で静かな趣きの中、う雑炊をいただきながら伺いました。御前の変わらぬ笑顔に、私が励まされておりました。
人の世は、一寸先は闇。かけがえのない命も、天から授かったものとあらば、いつ天に召されても不思議はありません。今こうして生かされていることに感謝して、日々を精一杯生きていたいものです。
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