フォト

丹生谷真美のフィニッシングスクール

« 九月十日 | トップページ | 秋の朝 »

2016年9月16日 (金)

雨月

風枯木を吹けば晴天の雨。
月平沙を照らせば夏の夜の霜。
それさえあるに秋の空。
餘りに堪へぬ半ばの月。
あら面白の折からやな。

謡曲『雨月』より。

「風は枯木を吹き晴天に雨音を立て
月は平らな砂を白く照らし夏の夜に霜を降ろす」
とは『和漢朗詠集』にも撰ばれた
白居易の詩句です。

謡曲は続きます。

「夏の夜の月さえかように趣き深いというのに、
まして秋の空。
感に堪えないほどの秋半ばの名月」だと。

西行法師が和歌の神様である住吉明神に参詣、
その夜、あばら家に一夜の宿を乞いました。

このあばら家に住む老夫婦がなかなかの洒落者で。

「秋の村時雨や木の葉の音を聞きたいから
軒先まで屋根を葺こうじゃないか」
との翁の提案に、
「月影を愛でたいから屋根は葺かない」
と姥が異を唱える。

翁が
「賤が軒端を葺きぞ煩ふ」
(あばら家の軒先を葺いたものか
どうか思い悩む)とつぶやく
そのつぶやきに上の句を乞われた西行は

「月は漏れ雨は溜れととにかくに」
(月影は漏れ、雨は漏れずに音を立て
とあれこれ思うと)と詠むんですね。

「面白の言の葉や」ということで
西行は一夜の宿を許されることになります。

突然、嵐が吹き、時雨の雨音が聞こえます。

「よく聞けば時雨ならで更け行くまゝに
秋風の軒端の松に吹き来るぞや」
時雨ではなく、木の葉時雨だったんですね。

しかも嵐が吹いたので空が澄み
名月がその姿を見せている。

雨と月と。
どちらをも愛でつつ、更け行く秋の夜長を愉しむ、
なんとも風雅なる光景です。

実はその翁と姥、住吉明神であらせられたという
謡曲『雨月』の物語でございました。

今宵は十六夜。
しかも明日から三連休。
天文学的には満月は明日だそうでございますが
三日続けてのんびりと秋の明月を愉しめるとは
まことに結構なことでございます。

賤の屋の老夫婦と西行を偲び
雨音と月影の風情を存分にお愉しみくださいませ。

« 九月十日 | トップページ | 秋の朝 »

文化・芸術」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

和歌、詩」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 雨月:

« 九月十日 | トップページ | 秋の朝 »

2020年10月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

こちらの雑誌に執筆/取材協力させていただきました

最近のトラックバック


-天気予報コム-