フォト

丹生谷真美のフィニッシングスクール

« 秋 | トップページ | 早冬 »

2020年11月 1日 (日)

今は昔

平成十三年霜月朔日。
今は遠い昔。

ひんやりと清げなる風の冷たさも心地よく、駅前の銀杏並木もにわかに色づきて、金色の木の葉のほろほろとこぼれ落つるほどに、「山の紅葉はいかならん」「いざ行きて見ん」とて、霜月朔日、下野は日光にまかりいでぬ。

北のかたへと車走らせて下野にいりて、昼つかた東照宮に詣でぬ。常にても極彩色に輝きたる陽明門の光に満ちたるさま、晩秋の空に美々しく映へわたりてえもいはず艶なり。

見ざる聞かざる言わざるを思ひ、薬師堂にて龍の鳴くを聞きしのちは、秘仏の薬師如来に向かひ手をあわせ拝みて、おんころころせんだりまとうぎそわか、ばてれんの身なれども神も御仏も隔てなければ、げにありがたき心地こそすれ。

庭園をそぞろ歩けば、木立ち多かる中、楓の紅濃くもみぢたるさま、いみじうあてなり。さも美しうもみぢては散りゆくいのちこそ、あはれにをかしけれ。

昼下がり、霧の濃きいろは坂を越へ中禅寺湖にいでぬ。風の冷たき中、散りつもりたる木の葉を踏み歩くほどに、かさかさと乾きたる音、落ち葉の匂ひなどほのかにして、往ぬる秋の趣きこそすれ。

やがて日も暮れなんとすれば、空もたなびく雲も湖の面もすべて薄紅に染まりて、日の入りはてぬれば、やうやう薄墨に染まりゆくもをかし。

日光へくだる道すがら、仰ぎ見れば、山の端にさしいでたる月のやうやういづるほどに、明かく澄めることいとめでたし。月を愛でる心の千歳の昔より変はらざりけるこそをかしけれ。十六夜の月なれど太陽暦にては朔日とはなん、あさましき。

今宵も同じ十六夜、そしてお朔日。

晩秋なのに、春ではないのに
心に浮かぶ歌は

月やあらぬ春や昔の春ならぬ
わが身ひとつはもとの身にして
在原業平

いや、秋も月も変わってはいない。
我が身ひとつが
もとの身ではないかも。

令和二年霜月朔日。 
風の冷たさが肌に心地よく、
駅前の銀杏並木は色づいています。
秋も深まってまいりました。

おはようございます。

« 秋 | トップページ | 早冬 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

2021年2月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

こちらの雑誌に執筆/取材協力させていただきました

最近のトラックバック


-天気予報コム-