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丹生谷真美のフィニッシングスクール

カテゴリー「和歌、詩」の記事

2020年10月19日 (月)

贈劉景文 蘇軾

荷は尽きて已に雨を擎ぐる蓋無く
菊は残はれて猶ほ霜に傲る枝有り
一年の好景君須らく記すべし
正に是れ橙は黄に橘は緑なる時

拙訳

劉景文に贈る  

蓮の花は枯れ果て、
傘のように雨を防ぐ葉も
すでにない。
菊の花は散って
枝だけが残り、
霜に耐えている。
一年で最も美しいこの光景を
君は心に記しておくれ。
今まさに橙は黄に色づき、
みかんはまだ緑、
そんな時なのだから。

橙が黄に色づき始め
みかんはまだ青い。
そんな美しい時。

おはようございます。

2020年9月10日 (木)

九月十日

九月十日即事 李白

昨日登高罷み
今朝更に觴を挙ぐ
菊花何ぞ太だ苦しき
此の両重陽に遭う

拙訳:

昨日登高の宴は終わったのに
今朝も更に盃を挙げている。
菊の花には何とも気の毒なこと、
このように
二度目の重陽に出逢うとは。

左遷されちゃったし、
と勢いに任せて
朝からやけ酒の迎え酒で詩を一篇。
さすが李白大先生。
あっぱれです。

時代は下り、国は異なれど
菅原道真公が配流先の大宰府で
嘆きながら詩を詠じたのも
同じ九月十日でした。

九月十日

去年の今夜清涼に待す
秋思の詩篇獨り斷腸
恩賜の御衣は今此こに在り
捧持して毎日餘香を拝す

拙訳:

去年の今夜は清涼殿で
お傍近くお仕えしていたのに。
「秋思」という勅題で 
詩篇を詠んだこと、
ただ断腸の思いなり。
あの折賜った御衣は
今もここにある。
毎日捧げ持っては
残り香を拝するばかり。

こんな嘆き節まで
大和言葉のお歌ではなく
外国語の詩にできてしまうところが
この方の才能であり
弱点でもあったのでしょうか。

そんなこんなであっちもこっちも
思うに任せぬは人生と
思い知らされる今日、
九月十日でございます。

おはようございます。

2020年9月 1日 (火)

手紙

「秋思」 張籍

洛陽城裏秋風を見る
家書を作らんと欲して意万重
復た恐る怱怱にして説き尽くさざるを
行人発するに望んで又封を開く

拙訳

洛陽の城内に秋風を見る。
故郷に手紙を書こうとすると、
さまざまな思いが巡る。
急ぎ書いて
思いを言い尽くしていないのではと案じられ、
手紙を託す旅人が出発するに及んで、
また封を開いてしまった。

言葉を尽くして
丁寧にしたためた手紙は
書かれた言葉以上の思いを
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手紙を書くことを愉しみながら
「失礼にならない」よりも
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2020年8月24日 (月)

夕月夜

処暑から一夜明け
風が爽やかにに感じられる一日でした。

秋吹くはいかなる色の風なれば
身にしむばかりあはれなるらむ    
          和泉式部

吹きくれば身にもしみける秋風を
色なきものと思いけるかな 
           紀友則

秋の風は陰陽五行思想から
「素風」とも「金風」とも呼ばれます。
「色なき風」は白、素風のこと。

石山の石より白し秋の風 
         芭蕉

夕月夜。
色なき風が汗ばんだ肌を
やさしく撫でて過ぎていきます。

2020年6月15日 (月)

七歩詩

暑となるらしき朝。

唐突ではございますが
唐土は群雄割拠の時代の
熱い詩を二篇ばかり。

判官贔屓に傾くのは
人の心の常のようで
ご存知『三国志演義』では
劉備は仁徳の人。
曹操は奸雄、悪役として
描かれています。

個人的には優柔不断で
感情に流されがちな劉備より、
知力も決断力も統率力もある
曹操に心惹かれます。

曹操は、武将として卓越した資質の
持ち主であったばかりではなく、
優れた詩人としても名を遺しています。

この才能は息子たちにも受け継がれ、
三曹と言えば
曹操曹丕曹植親子のこと。

本日の漢詩は 
三国志に登場する曹ファミリーの
二篇でございます。

まずは曹操が赤壁の戦いで 
詠じたとされる詩。

酒に対して当に歌うべし
人生幾何ぞ
譬えば朝露の如し
去る日は苦(はなは)だ多し
慨して当に以て慷(こう)すべし
幽思忘れ難し
何を以てか憂いを解かん
唯杜康(とこう)有るのみ

拙訳:
酒を前にしたらとことん歌うべきだ。
人生がいかほどのものか。
喩えれば朝露のように儚いものだ。
日々はただ過ぎていく。
思いが高ぶり、
嘆き声は大きくなっていく。
沈む思いを忘れ去ることはできない。
一体どうやってこの憂いを解くのだ。
ただ酒を呑むしかない。

威風堂々の歌いっぷり、 
戦いの最中に余裕たっぷりですね。
残念ながらこの後、
孫権劉備の連合軍の火攻めに大敗、
遁走なさいましたが。

曹操の跡を継ぎ魏王となった曹丕は 
すぐに粛清を始めます。

一番のライバルだった弟の曹植を
「七歩進む間に詩を一篇詠まねば
死刑に処す」と脅し、
曹植が即興で詠んだとされる歌。

七歩詩        曹植

豆を煮て持って羹(あつもの)と作(な)し
豉(し)を漉して以って汁と為す
萁(き)は釜の下に在りて然(も)え
豆は釜の中に在りて泣く
本は同根より生ずるに
相ひ煎ること何ぞ太(はなは)だ急なると

拙訳:
豆を煮てあつものを作り  
つぶした豆を濾して汁にする。
豆がらは釜の下で燃え 
豆は釜の中で泣く。
もとは同じ根から生まれたものなのに
なぜ煎られねばならないのか。

実話かどうかはともかくとして
無才の身は曹植の
即興でかような優れた詩を詠む才に
ひたすら憧れるばかりでございます。

2020年5月15日 (金)

それでも平気物語

戯れ歌改め戯れ古典シリーズ
ついにその十までまいりました。

それでも平気物語

持続化給付の金のかけ声
事業主無常の嘆きあり。
定額給付のマイナンバー
取得者必須のオンライン叶わず。
外出る者は久しくおらず
飲み会はただ夢のごとし。
高き熱も遂には陽性
ひとへに風邪の前の咳に同じ。

2020年5月14日 (木)

春はウイルス

戯れ歌ならぬ戯れ古典?その九
お先真っ暗の公式

春はウイルス。やうやう広がりゆく瀬戸際、マスク配りて、この先成り立つ当ての細くただ引き籠る。 秀麿


夏流行る。クラスターはさらなり。パチンコもなほ人の多く行きちがひたる。ただひとりふたりなど検査するもあほらし。 白妙の敷布

秋にくたびれ。夕日の差して街の中いと暗うなりたるに、酒の飲場へ行くとて、三杯四杯、二人三密避けて飲み急ぐのはあはれなり。まいて生活様式がキツくなれば、人と親しく会へぬは、いとかなし。日入り果てて、病の数や死者の数など出すは、今や言ふべきにあらず、常なり。 秀麿

冬は勤めているやら(ため息)。業績の落ちたるは言ふべきにもあらず。ノロ、インフルとウイルスのまたさらでもいと多きに、ワクチンなど急ぎおこしたるもむなし。コロナになりて、熱頭痛などありても保健所病院たらい回しになりてわろし。 白妙の敷布

2020年4月16日 (木)

心自ずと閑なり。

山中問答 李白

余に問う何の意ぞ碧山に栖むと
笑って答えず心自ずから閑なり
桃花流水杳然として去り
別に天地の人閒に非ざる有り

拙訳:

人は私に尋ねる。
どうしてこんな緑深い
山奥に住むのかと。
私は笑って答えない。
心はのびのびと穏やかだ。
桃の花びらを浮かべ、
水は悠然と流れていく。
ここは俗世間とは違う
別天地なのだ。

我が住まいは
山中にはございませんが
田園っぽい地名は
当たらずと雖も遠からず。

ちょっと歩けば
多摩川は桜の花びらを浮かべ
悠然と流れております。

心自ずと閑なり。

さらに教室も自粛お休み中の今は
訪ねくるものとてなく、

四月の予定表は、なんと
「確定申告」
「和歌締切』
「原稿締切」
この三つだけ。

確定申告は先週ようやく終え 
残りの二つも
今週末には終わってしまいます。

その後は困るくらい、
別に天地の人閒に非ざるくらい、
自ずと閑なり。

いよいよオンライン授業でも
始めることにいたしますか。

おはようございます。

2020年3月30日 (月)

散り急ぐな

満開の桜に
「散り急ぐな」とささやかんばかりに
天から雪の舞い降りた日曜日。 

私こと
この世に命を授かった記念すべき日を
また新しく迎えることができました。

杜甫が

「酒債尋常行く處に有り
人生七十古來稀なり」

(酒代の借金など常のこと、
行く先々にあるが
どうせ人生七十まで生きることは
稀なのだ。)

と詠じた齢。

古には稀であったものが

いにしえは 稀なことぞと 聞きしかど 
今は世の常 めでたくもなし
               愚詠

今の世では当たり前のことになりました。

ここから先は
杜甫が授かることのなかった時間。

飲んだくれているわけには
まいりません。

雪をまとった花を思い
散り急がず
自分にできること
自分にしかできないことを
ひとつひとつ
心をこめてしていきたい。

皆様に支えられ、励まされ、
生かされていることに
この場を借りて
心からお礼を申し上げます。

深い感謝とともに
謹んで。

2020年3月29日 (日)

人生七十古来稀なり

曲江 杜甫

朝より回って日日春衣を典す
毎日江頭醉を盡して歸る
酒債尋常行く處に有り
人生七十古來稀なり
花を穿つ蛺蝶深深として見え
水に點ずる蜻點款款として飛ぶ
傳語す風光共に流轉し
暫時相賞して相違うこと莫れと

拙訳:

朝廷を退出すると、毎日春着を質に入れて
曲江のほとりで酒をしこたま飲んで帰る。
酒代の借金など常のこと、行く先々にある。
どうせ人生七十まで生きることは稀なのだ
花の奥深くで揚羽蝶が蜜を吸い、
水面に点々と尾をつけて蜻蛉が緩やかに飛んでいく。
風や光に語りかける。
ともに身を任せ移ろいゆき、
しばしは美しさを愛で合って、
背くことなどないようにしよう、と。

 

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