フォト

丹生谷真美のフィニッシングスクール

カテゴリー「和歌、詩」の記事

2020年6月15日 (月)

七歩詩

暑となるらしき朝。

唐突ではございますが
唐土は群雄割拠の時代の
熱い詩を二篇ばかり。

判官贔屓に傾くのは
人の心の常のようで
ご存知『三国志演義』では
劉備は仁徳の人。
曹操は奸雄、悪役として
描かれています。

個人的には優柔不断で
感情に流されがちな劉備より、
知力も決断力も統率力もある
曹操に心惹かれます。

曹操は、武将として卓越した資質の
持ち主であったばかりではなく、
優れた詩人としても名を遺しています。

この才能は息子たちにも受け継がれ、
三曹と言えば
曹操曹丕曹植親子のこと。

本日の漢詩は 
三国志に登場する曹ファミリーの
二篇でございます。

まずは曹操が赤壁の戦いで 
詠じたとされる詩。

酒に対して当に歌うべし
人生幾何ぞ
譬えば朝露の如し
去る日は苦(はなは)だ多し
慨して当に以て慷(こう)すべし
幽思忘れ難し
何を以てか憂いを解かん
唯杜康(とこう)有るのみ

拙訳:
酒を前にしたらとことん歌うべきだ。
人生がいかほどのものか。
喩えれば朝露のように儚いものだ。
日々はただ過ぎていく。
思いが高ぶり、
嘆き声は大きくなっていく。
沈む思いを忘れ去ることはできない。
一体どうやってこの憂いを解くのだ。
ただ酒を呑むしかない。

威風堂々の歌いっぷり、 
戦いの最中に余裕たっぷりですね。
残念ながらこの後、
孫権劉備の連合軍の火攻めに大敗、
遁走なさいましたが。

曹操の跡を継ぎ魏王となった曹丕は 
すぐに粛清を始めます。

一番のライバルだった弟の曹植を
「七歩進む間に詩を一篇詠まねば
死刑に処す」と脅し、
曹植が即興で詠んだとされる歌。

七歩詩        曹植

豆を煮て持って羹(あつもの)と作(な)し
豉(し)を漉して以って汁と為す
萁(き)は釜の下に在りて然(も)え
豆は釜の中に在りて泣く
本は同根より生ずるに
相ひ煎ること何ぞ太(はなは)だ急なると

拙訳:
豆を煮てあつものを作り  
つぶした豆を濾して汁にする。
豆がらは釜の下で燃え 
豆は釜の中で泣く。
もとは同じ根から生まれたものなのに
なぜ煎られねばならないのか。

実話かどうかはともかくとして
無才の身は曹植の
即興でかような優れた詩を詠む才に
ひたすら憧れるばかりでございます。

2020年5月15日 (金)

それでも平気物語

戯れ歌改め戯れ古典シリーズ
ついにその十までまいりました。

それでも平気物語

持続化給付の金のかけ声
事業主無常の嘆きあり。
定額給付のマイナンバー
取得者必須のオンライン叶わず。
外出る者は久しくおらず
飲み会はただ夢のごとし。
高き熱も遂には陽性
ひとへに風邪の前の咳に同じ。

2020年5月14日 (木)

春はウイルス

戯れ歌ならぬ戯れ古典?その九
お先真っ暗の公式

春はウイルス。やうやう広がりゆく瀬戸際、マスク配りて、この先成り立つ当ての細くただ引き籠る。 秀麿


夏流行る。クラスターはさらなり。パチンコもなほ人の多く行きちがひたる。ただひとりふたりなど検査するもあほらし。 白妙の敷布

秋にくたびれ。夕日の差して街の中いと暗うなりたるに、酒の飲場へ行くとて、三杯四杯、二人三密避けて飲み急ぐのはあはれなり。まいて生活様式がキツくなれば、人と親しく会へぬは、いとかなし。日入り果てて、病の数や死者の数など出すは、今や言ふべきにあらず、常なり。 秀麿

冬は勤めているやら(ため息)。業績の落ちたるは言ふべきにもあらず。ノロ、インフルとウイルスのまたさらでもいと多きに、ワクチンなど急ぎおこしたるもむなし。コロナになりて、熱頭痛などありても保健所病院たらい回しになりてわろし。 白妙の敷布

2020年4月16日 (木)

心自ずと閑なり。

山中問答 李白

余に問う何の意ぞ碧山に栖むと
笑って答えず心自ずから閑なり
桃花流水杳然として去り
別に天地の人閒に非ざる有り

拙訳:

人は私に尋ねる。
どうしてこんな緑深い
山奥に住むのかと。
私は笑って答えない。
心はのびのびと穏やかだ。
桃の花びらを浮かべ、
水は悠然と流れていく。
ここは俗世間とは違う
別天地なのだ。

我が住まいは
山中にはございませんが
田園っぽい地名は
当たらずと雖も遠からず。

ちょっと歩けば
多摩川は桜の花びらを浮かべ
悠然と流れております。

心自ずと閑なり。

さらに教室も自粛お休み中の今は
訪ねくるものとてなく、

四月の予定表は、なんと
「確定申告」
「和歌締切』
「原稿締切」
この三つだけ。

確定申告は先週ようやく終え 
残りの二つも
今週末には終わってしまいます。

その後は困るくらい、
別に天地の人閒に非ざるくらい、
自ずと閑なり。

いよいよオンライン授業でも
始めることにいたしますか。

おはようございます。

2020年3月30日 (月)

散り急ぐな

満開の桜に
「散り急ぐな」とささやかんばかりに
天から雪の舞い降りた日曜日。 

私こと
この世に命を授かった記念すべき日を
また新しく迎えることができました。

杜甫が

「酒債尋常行く處に有り
人生七十古來稀なり」

(酒代の借金など常のこと、
行く先々にあるが
どうせ人生七十まで生きることは
稀なのだ。)

と詠じた齢。

古には稀であったものが

いにしえは 稀なことぞと 聞きしかど 
今は世の常 めでたくもなし
               愚詠

今の世では当たり前のことになりました。

ここから先は
杜甫が授かることのなかった時間。

飲んだくれているわけには
まいりません。

雪をまとった花を思い
散り急がず
自分にできること
自分にしかできないことを
ひとつひとつ
心をこめてしていきたい。

皆様に支えられ、励まされ、
生かされていることに
この場を借りて
心からお礼を申し上げます。

深い感謝とともに
謹んで。

2020年3月29日 (日)

人生七十古来稀なり

曲江 杜甫

朝より回って日日春衣を典す
毎日江頭醉を盡して歸る
酒債尋常行く處に有り
人生七十古來稀なり
花を穿つ蛺蝶深深として見え
水に點ずる蜻點款款として飛ぶ
傳語す風光共に流轉し
暫時相賞して相違うこと莫れと

拙訳:

朝廷を退出すると、毎日春着を質に入れて
曲江のほとりで酒をしこたま飲んで帰る。
酒代の借金など常のこと、行く先々にある。
どうせ人生七十まで生きることは稀なのだ
花の奥深くで揚羽蝶が蜜を吸い、
水面に点々と尾をつけて蜻蛉が緩やかに飛んでいく。
風や光に語りかける。
ともに身を任せ移ろいゆき、
しばしは美しさを愛で合って、
背くことなどないようにしよう、と。

 

一年の春

城東の荘に宴す  崔敏童

一年始めて一年の春有り
百歳曾て百歳の人無し
能く花前に向て幾回か酔わん
十千もて酒を沽う 
貧と辞すること莫かれ

拙訳:
一年が過ぎれば
新たな年の春がくる。
そうして百年が過ぎても
百歳まで生きる人はいない。
咲く花を前に酒を飲んで
幾度酔えることか。
一万銭で酒を買ってこよう。
貧しいのだからと
断らないでおくれ。

2020年2月29日 (土)

二月つごもり

今は昔、

二月もつごもりというのに

肌を刺す風が吹いて

空は雲に覆われ

雪が少し降っていた朝のこと。


「公任の宰相殿から」と

主殿寮の役人が

手紙を持ってまいりました。


公任様と言えば

抜群の詩才と教養で知られる

殿上人でいらっしゃいます。


何かしら

とおそるおそる開いてみると

懐紙に見事な筆で


少し春ある心地こそすれ


とございます。


春が少しだけある心地がする


唐の詩人、白楽天の詩


三時雲冷やかにして多く雪を飛ばす

二月山寒うして春有ること少なし


を踏まえているのですね。


まるで今朝の空 

そのままではありませんか。


連歌を詠みかけて

上の句を詠み返せよ、

という趣向です。 


言葉遊びは得意分野ではあるけれど、

公任様に試されるなんて

正直、ちょっと荷が重い。


公任様のほかには 

どなたがいらっしゃったかと

使者に問えば、

名だたるお歴々ばかりが 

お揃いのごようす。


相手が相手だけに

通り一遍の下手な返歌では

すまされません。


定子様にお伺いしようにも、

帝がおわたりあそばされ、

例の如くお二人で睦まじく

ご寝所におこもりでいらっしゃる。


あくまでも遊びなのですから

下手に時が経っては興醒めです。


えーい、なるようになれだわ。


空寒み花にまがえて散る雪に


これでどうかしら。  


寒さにかじかんで震える手で

書いてはみたけれど、

どう評価されるものか、どきどき。


寒空から花が散るように

はらはらと散る雪に


短い上の句に

白氏文集が出典だということも

「心得ております」

とさりげなく匂わせた上で

なおかつ

散る雪を白い花に見立てることで

「少し春」に落とし込む。


なかなかどうして、

我ながら、即興としては

絶妙のできばえ。


こういう知的遊戯って

刺激的で、わくわくいたします。


内心かなりの自信があるものの、

とにかく相手はかの公任様ほか、

教養あふれる殿上人の方々でいらっしゃる。


結果は、ご想像の通り。

殿上人の間で大評判だったようです。


ま、どうってことでも

ございませんけれど。


枕草子百六段

「二月つごもりごろに」より

拙訳でございました。


空寒み花にまがえて散る雪に

少し春ある心地こそすれ


寒空から花が散るように

はらはらと散る雪に

春が少しだけある心地がする


二月つごもりの

光がこぼれる朝に。

2020年2月13日 (木)

早春

早春、水部張十八員外に呈す 韓愈
 
天街の小雨潤ふこと酥の如し
草色遥かに看ゆるも近づけば却って無し
最も是れ一年春の好き処
絶えて勝る烟柳の皇都に満つるに
 
拙訳
 
都大路に小雨が降って
道は練乳のように濡れている。
遥か遠くから草の色が見えるが、
近づくと却って見えなくなってしまう。
春は一年で最もよい季節だ。
天子が住まわれる都に
煙ったように柳があふれる光景は
何よりも美しい。

2020年1月 2日 (木)

初春

Cci_000001

より以前の記事一覧

2020年7月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

こちらの雑誌に執筆/取材協力させていただきました

最近のトラックバック


-天気予報コム-